健康づくりのための睡眠【世代別の睡眠】
成人の睡眠
適切な睡眠時間には個人差がありますが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保しましょう。
食生活や運動等の生活習慣や寝室の睡眠環境を見直して、睡眠休息感を高めましょう。
睡眠の不調や睡眠休息感の低下がある場合は、生活習慣等の改善を図ることが重要ですが、病気が潜んでいる可能性があります。
休日の「寝だめ」の問題点
- 平日の睡眠不足を、休日に取り戻そうと長い睡眠時間を確保する「寝だめ」の習慣がある人は少くありませんが、このような習慣で、実際に眠りを「ためる」ことはできません。国際的には「社会的時差ボケ」とも呼ばれています。
- 「寝だめ」は慢性的な睡眠不足による健康への悪影響と、頻回に体内時計のずれが生じることによる健康への悪影響の両側面を有しており、肥満や糖尿病等の生活習慣病の発症リスク、脳血管障害や心血管系疾患の発症リスク、うつ病の発症リスクとなることが報告されています。
- 休日の「寝だめ」では、平日の日中の眠気は完全に解消できず、メリットは極めて限定的との報告もあります。
- 「寝だめ」のために休日の起床時刻が大きく遅れると、体内時計が混乱し、時差地域への海外旅行と同様の時差ボケが生じる結果、健康を損なう危険性があると考えられます。
睡眠不足・睡眠休息感低下の裏に潜む睡眠障害
睡眠環境・生活習慣・嗜好品の改善をしても十分な時間眠れない、睡眠で休養感が得られない、日中の眠気が強いなどの症状が継続し、それらの症状が日常生活に影響を及ぼしている場合は、速やかに医師に相談しましょう。
高齢者の睡眠
長い床上時間(寝床ですごす時間)は健康リスクとなりますので、床上時間が8時間以上にならないことを目安に、必要な睡眠時間を確保しましょう。
食生活や運動等の生活習慣・寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休息感を高めましょう。
長い昼寝は夜間の良眠を妨げるため、日中の長時間の昼寝は避け、活動的に過ごしましょう。
長時間睡眠による健康リスク
成人では、短時間睡眠(睡眠不足)による健康への悪影響に注目されてきましたが、高齢世代においては、むしろ長時間睡眠による健康リスク(死亡リスク)の方がより強くあらわれることが研究で示されています。
また、長時間の睡眠(9時間以上)がアルツハイマー病の発症リスクを増加させることが報告されています。
昼寝
夜間の良眠を妨げてしまう原因になりうるため、日中の長時間の昼寝は避けるようにしましょう。目覚ましをかける、同居者に起こしてもらうなどの工夫をするように心がけましょう。
日中の活動の昼夜のメリハリ
昼夜のメリハリを増進するために、日中の活動を増やし、必要以上に寝床で過ごさないようにすることが、健康を保持・増進するために重要です。高齢世代は特に次の2点を意識しましょう。
- 日中できるだけ長く太陽の光を浴びること
- 習慣的に運動を行うこと
妊娠、子育て、更年期と良質な睡眠
ポイント
- 睡眠は月経習慣の影響を受ける
- 妊娠中の睡眠は妊娠経過とともに変化する
- 子育て期の睡眠も健康増進、維持には重要である
- 更年期には睡眠の悩みが再び増えやすい傾向がある
月経周期に関連した睡眠変化
女性は、月経周期における女性ホルモンの関係で、月経前は睡眠が浅くなるとともに、日中の眠気が強まります。
月経周期による睡眠問題に対処するために、月経周期をご自身で記録し、睡眠変化が起こりやすい時期を把握することが有効です。月経前は特に、睡眠環境や生活習慣を整え、嗜好品の取り方を見直すことを心がけましょう。
妊娠中の睡眠変動
妊娠すると、ホルモン分泌パターンが大きく変化します。約8割の妊婦は睡眠が不安定になり、これに伴う昼間の眠気、疲労感、イライラ、集中力の低下を経験します。眠りが浅くなり睡眠休養感が低下するため、妊娠前よりも睡眠時間が長くなる傾向があります。
- 妊娠初期
女性ホルモンの変化に睡眠が妨げられることがあります。またこの時期はつわりや妊娠に関する心配事も多く、不安やストレスが睡眠に影響します。 - 妊娠中期
一時的に睡眠が安定しますが、妊娠中期の終わりごろからお腹が大きくなり胎動が増えると、眠りが浅くなり、夜中に目が覚めることが多くなります。 - 妊娠後期
足の不快感やこむらがえり、閉塞性睡眠時無呼吸などが生じやすくなります。
妊娠中はホルモン分泌が大きく変動し、眠りに影響が出ることを知り、心配しすぎないようにしましょう。気分転換をしたり、散歩やストレッチをしたりすることで、こころとからだをリラックスさせましょう。お腹が大きくなるのにあわせて、寝やすい体勢をみつけましょう。
子育て期の睡眠
生まれたばかりの赤ちゃんは、数時間おきに寝たり起きたりを繰り返します。授乳と夜泣きの対応で養育者の睡眠も細切れになります。養育者にとって、睡眠を確保することは心身の健康を守るために重要です。生後数週間経過すると、徐々に赤ちゃんの夜眠る時間が延びるとともに昼間起きている時間が長くなり、大人の睡眠・覚醒リズムに近づきます。睡眠・覚醒リズムの確立を助けるために、夜は部屋を暗くし、朝になったらカーテンを開けて部屋を明くしましょう。
更年期と睡眠
閉経(日本人の平均閉経年齢は50歳頃)の前後5年の約10年は更年期と呼ばれます。更年期では不眠症や閉塞性睡眠時無呼吸などへの罹患リスクが増大することが知られています。また、更年期に多い症状である「ホットフラッシュ」などの血管運動神経症状が重いと、深い睡眠が妨げられやすく、睡眠中に目が覚めやすくなると考えられています。
男性も、更年期に男性ホルモンが減少します。男性ホルモンの減少による証拠は十分に得られていませんが、更年期以降の男性は不眠症をはじめとした睡眠障害が増加します。
更年期に生じる不眠症状は、そのほかの更年期症状の治療により改善・軽減する可能性があります。
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