市域の東南部、奈良県境付の小田原の東側に位置している古刹。寺の縁起によると、天平元年(729)、聖武天皇の勅願によって開基したと伝え、平安時代の本尊阿弥陀如来坐像、普賢菩薩坐像、鎌倉時代の十三重石塔や五輪塔、室町時代の三重塔(いずれも重要文化財)というように、それぞれの時代に優れたものがつくられました。歴史的にも美術的にも、浄瑠璃寺などと同じく南都興福寺の影響を強く受けた寺院です。
 山間部の谷間にあることから広葉樹が多く、初夏の新緑、秋の紅葉は修理の終わった三重塔の朱ともマッチして、こぢんまりとした境内に奥行きを与えています。また、境内一帯に植えられたアジサイが美しく咲くことでも知られています。

岩船寺阿弥陀如来坐像(重要文化財)

本堂に安置されている阿弥陀如来坐像は、高さ2.4メートルという大きなもので、一本の榧(かや)から掘り出されています。胎内には経文などの銘文があり、その中に、「天慶九年丙午(946)九月二日梵字奉書」という銘文があったことから、貞観彫刻の重厚さと和様という日本的な美術表現をもつ過渡的な仏像として、美術史上の基準される仏像で、紅色の彩色が残る衣が古様を示しています。重要文化財に指定されています。

厨子入普賢菩薩騎象像(重要文化財)

本堂には、普賢菩薩騎象像が厨子に入って安置されています。普賢菩薩像は平安時代に造立されたもので、像高三九・五センチの可愛らしい坐像で、菩薩像が乗っている白象は、後世に補われたものです。厨子は後壁に法花曼陀羅を描いた南北朝時代のもので、永正16年(1519)の修理銘が厨子の底に書かれています。

 

岩船寺十三重塔(重要文化財)

境内には十三個の笠石を積み重ねた高さ6.2メートルの十三重石塔があります。切石で造られた方形の基壇から相輪まで完全に残る珍しいもので、重要文化財に指定されています。

 

岩船寺三重塔(重要文化財)

岩船寺の山門をくぐると、正面の奥まった高台に朱塗りの色鮮やかな三重塔が建っています。嘉吉2年(1442)の銘文からこの頃につくられたものと考えられています。表面は板壁、初層は心柱や四天柱がなく、中央に須弥壇を設けて二本の来迎柱を配置する構造で、室町時代の特徴を示しています。初層内部には壁画が描かれていて、近年の修理の際扉絵も含め復元されました。

 

所在地

木津川市加茂町岩船(いわふね)

アクセス

JR加茂駅から、コミュニティバス「当尾線」をご利用ください。