はじめに

血圧とは、血液が流れるときに、血管の壁にかかる圧力のことです。血圧は1日のなかでも 常に変動していますが、安静にしているときでも高い状態が続くことを「高血圧」といいます。
日本人の高血圧の最大の原因は、塩分の摂りすぎです。若年・中年の男性では、肥満が原因の高血圧も増えています。高血圧は、喫煙と並んで、日本人の生活習慣病死亡に最も大きく影響する要因です。もし高血圧が完全に予防できれば、年間10万人以上の人が死亡せずにすむと推計されています。

高血圧自体は、過去数十年で大きく減少しましたが、今なお20歳以上の国民のおよそ2人に1人は高血圧です。

高血圧の基準

日本高血圧学会の高血圧基準として、診察室で測定する血圧(診察室血圧)や家庭内で測定する血圧(家庭血圧)を使用します。

診察室血圧

収縮期血圧(いわゆる”上”、最大血圧)が140mmHg以上
または
拡張期血圧(いわゆる”下”、最小血圧)が90mmHg以上

人によって、普段家庭で測定する血圧(家庭血圧)は正常なのに、病院での診察時に血圧が高くなられる方がおられます。このような状態を『白衣高血圧』といいます。そのため、家庭血圧も参考に診察されます。白衣高血圧の方は、将来診察室以外でも高血圧を示す可能性が高い状態です。高齢者に多く、高血圧でない人に比べて、脳卒中のリスクが高まります。
家庭血圧

収縮期血圧が135mmHg以上
または
拡張期血圧が85mmHg以上

普段家庭で測定する場合は高血圧値なのに、診察室で測定する血圧が正常値を示す方がおられます。このような状態を『仮面高血圧』といい、体調や時間帯での変動性が大きいため、日頃から正しい方法で家庭血圧を測ることがとても大切です。仮面高血圧は、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高いほか、腎臓障害が進行している場合もあります。

 

高血圧による影響

血管はもともと弾力があり、しなやかなものですが、高血圧により負担がかかることで、血管内部は狭くなり、弾力性を失い、脆くなります。この状態を『動脈硬化』といい、動脈硬化の進行した血管は破れたり、詰まるリスクが高まります。脳卒中や、心疾患、腎不全なども高血圧が一要因となることもあるため、高血圧は様々な病気を引き起こすリスクであり、『サイレントキラー』とも呼ばれています。

高血圧は、自覚症状は殆ど現れません。血圧がかなり高い場合には、頭痛やめまいなどが起きやすくなりますが、これらの症状は血圧とは関係ない場合にもよく現れるものであり、自覚症状で高血圧に気づくのは難しいといえます。

高血圧による臓器への影響

  • 『脳梗塞』…脳の血管がつまる
    『脳出血』…脳の血管が破れる
    どちらにも麻痺や構音障害(上手く話せなくなる)等の後遺症の可能性があります。

  • 目の血管に影響すると、眼底出血などにより視力の低下、視野障害になることがあります。
  • 心臓
    『狭心症』…心臓の筋肉に栄養を送る冠動脈という血管が動脈硬化により狭くなる。
    『心筋梗塞』…冠動脈の血管がつまり、心臓を動かす心筋が壊死していく。
    そのほかにも、高血圧により心臓に負荷がかかり、心肥大(心臓の壁が熱くなった状態)および心不全を引き起こします。
  • 腎臓
    蛋白尿や血尿・潜血尿を引き起し、腎機能の低下を招く可能性があります。腎機能の低下が進むと、人工透析(血液透析や腹膜透析等)が必要になることもあります。

血圧の正しい計り方

高血圧を早期に発見するには、定期的に血圧を測ることが重要です。血圧は、年齢を重ねるほど高くなりやすいため、健康診断や病院受診の機会だけでなく、日頃から測ることをおすすめします。

家庭血圧測定のポイント
  • 測定のタイミングを決める
    1日2回(朝・夜)、毎日同じタイミングで測定しましょう。
    朝…「起床後1時間以内」や「トイレにいったあと」、「朝食前」など
    夜…「寝る直前」、「夕食前」など(入浴や飲酒の直後は避ける)
  • 椅子に座り、1分から2分経って落ち着いた状態で測定する。
  • 血圧計の加圧部分を心臓と同じ高さにする(上腕で測定するタイプの血圧計がおすすめです。)
  • 服の上から測定しない(薄手のシャツ1枚程度ならOK)
  • 衣類の袖口をまくり上げた状態で測定しない
  • 測定した値は記録しておく

日常生活での高血圧の予防ポイント

減塩する
  • 減塩のポイント
    ・調味料は目分量ではなく、軽量スプーンで量る
    ・酸味や香りを効かせる(レモンやすだち、酢、しょうが、みょうがなど)
    ・味を効かせたいときは、最後の仕上げで表面に味をつける工夫を
    ・味噌汁は具だくさんにして、具のうまみを生かしただしをたっぷり使う
    ・しょうゆやソースは、「かける」ではなく「つける」を意識する

この他にも無理なく、美味しく減塩できるように『こちら』の資料でも紹介しておりますので、ご確認ください。

カリウムを多く含む食品をとる

野菜や果物等に多く含まれるカリウムには、体内の余分な塩分(ナトリウム)を排出する働きがあります。いつもの料理にカリウムを含む食材をプラスしてみましょう。※すでに病院を受診し、カリウム制限などの指示がある場合は、主治医の指示に従ってください。

『カリウムを意識した食生活』も参考にしてください。

禁煙する

喫煙により、血管が収縮されることで、血圧が上昇します。また血管の収縮で血液の流れを悪くし、動脈硬化を進行させます。
喫煙者だけでなく、受動喫煙でも血圧上昇を引き起こします。
周囲の人のため、自分の身体のために禁煙をしましょう。

休肝日をつくる

習慣的に大量の飲酒をする人は慢性的な高血圧の原因となります。お酒を飲まない日を週2日設けましょう。

運動習慣をもつ

毎日30分以上、ちょっときつかな?と感じる程度の有酸素運動を行うことが理想です。なかなか運動習慣がもてない方も、今より少しでも多く身体を動かすように意識しましょう。

適正体重を維持する

肥満体型の人は、健康体重の人と比べて1.5倍から2.5倍高血圧の発症のリスクがあると言われています。肥満の人は他の病気も誘発しやすくするため、適正体重を維持しましょう。
適正体重の参考にBMIを計算してみましょう。適正体重はBMI18.5以上25未満です。

BMI=現在の体重÷(身長m×身長m)

十分な休息をとる

ストレスによって交感神経が活発になると、急に脈が速くなり血圧が上昇します。リラックスする時間をとるようにしたり、十分な睡眠をとったりなど、ストレスと上手に付き合いましょう。

冬は寒冷対策をする
冬は他の季節と比べて血圧が上昇しやすくなります。脱衣所やトイレ、お風呂場から寒い場所に移動するシーンでは寒さ対策をきちんと行いましょう。
血圧の内服をしている方へ

血圧を良好に保つためには、医師の指示通りに内服することがとても重要です。そのため、自己判断による内服の中止はとても危険です。内服により体調に不具合が生じた場合や、薬に対する疑問があるなどの場合は必ず医師に相談しましょう。

外部リンク